その日、帰ってきた父に私はテストの結果を見せた。
思ったとおり父は私を怒鳴りつけ1週間自宅から出ることを禁じた。
買い物はもちろん、学校までも禁じられ自室に1週間缶詰状態を強要された。
私はその期間を缶詰期間とよんでいる。
こうなることはテストの結果を見たときからわかっていた。
テストの結果は学年6位
全体的な点数は悪くはないものの数学、英語、化学の点数が極端に下がっていることは明白だった。
父は学年5位以内でなければ認めない。
学年5位以内でも1位じゃないと声のトーンが落ちる
[仕方ない これが父のやり方でこれが私のため]そう言い聞かせそれに従うことしかできなかった。
それから1週間地獄のような日々を送っていた。
朝から晩まで勉強漬け
気を紛らわせることもできず、父が帰ってきたらその日の結果を見せる
それの繰り返し
この1週間のでき次第で次の週から学校に行けるかが決まる。
ひどいときは1ヶ月まるっと学校に行けなかったときもあった。
それでも必死に頑張って、缶詰期間最終日父からの「まあいいだろう」という言葉を待つ
そして、最終日の夕食後父は一週間の結果を踏まえ
「まあいいだろう次回は順位を上げろよ」と告げた。
その言葉を聞いて「うん…次回は頑張るね」と作り笑顔を浮かべて言う
そして「明日学校だから」といって部屋に戻る
そしてドアを閉めてから「ふー」と1つため息をついてベッドに横たわる
そのまま今日は寝ることにした。
次の日の朝1週間ぶりに家を出て、学校までの道のりを歩く
いつもどおりにパーカーに着替え、イヤホンをして学校へと向かう
学校について教室へ
1週間ぶりに吉田さんとその取り巻きたちに
「あんたまた来たの?」
「1週間来なかったからもう来ないのかと思った。」
「もしかして私たちにやられに来てる?」
いつも言われていたことなのに今日は久しぶりに聞いたからかはたまた父の缶詰期間の反動なのかいつもの倍、メンタルにくるものがあった。
そんな重たい気持ちを引きずって屋上へと向かう
屋上のドアを開けるとそこには1週間ぶりに会う先輩の姿があった。
「あ! 久しぶりに見た」と興味なさげに言われた。
「久しぶりです。」そうに返して屋上に端に座ってイヤホンをつけて音楽を聞く
先輩のことを見ないように目をつぶって
しばらくして目を開けると目の前に整った顔があった。
思わず「わぁ!!」とのけぞりながらイヤホンを外し「なんですか?」と聞く
「今のお前、人生終わったって顔してるよ」なんて言われてしまった。
「先輩は知らなくてもいいことですよ。見なかったことにしてください。」
「見なかったことにできるなら初めから声かけないでしょ?静かに立ち去るから 俺、そういうめんどくさいこと嫌いだから。」
その言葉を聞いた時私の中で何かが弾けたような気がした。
そして私は
「面倒なこと嫌いならほっといてください!私の人生は初めから終わってるんです。私は誰にも関わらず生きていないのと同じように人生送ってそして死んでいく それが私の人生なんです。私なんて所詮勉強しかできない他に何も持ってないそういう人なんです。」
「なに?なんで急にそんな事言ってんの?」
気づいたときには遅かった。
[こんなのただの八つ当たりだ…先輩は何も悪くない、なのに私は先輩に現状を何も伝えす一方的に当たって馬鹿みたい。]
我に返った私は「すみません。なんでもないです。忘れてください」それだけを呟いて、今日はもう学校じゃないところにいって時間を潰して帰ろうと思い立ち上がって屋上のドアに向かって歩き出そうとしたが…
「待てよ。何があったのかは知らないし、話したくないなら無理には聞かない。でもさお前がそんなに我慢して何になる?その我慢に意味があるか?」
そう言いながら私の腕を掴んだ先輩
そんなこと言われると思ってなかった。
引き止められて腕も掴まれた状態で、そんなことを言われたら必死でせき止めようとしていたものも崩れ去ってしまう
「意味なんて… 意味なんてなくたってしないといけない我慢が…少なくとも私の中の世界にはあるんです…同仕様もなく無意味で他人が聞いたらバカバカしいって思うことでも そうでもしないと生きていけないんです。」
弱々しい声でそう呟く
一度言い出したら止まらない言葉
流れ始めたら止めることのできない涙
けして誰にも言わないようにしてきた自分の気持ち
初めて自分の気持ちを言った。
お母さんも知らない私の気持ち
それを出会って半年も立たない先輩に言うなんて思ってなかった。
そこからは何も言うことができなかった。
ただひたすらに止まることを知らない涙を流し続けているだけしかできなかった。
そんな私を見た先輩は自分の胸の中に私のことを抱き寄せた。
そしてその状態で先輩は
「人生にはしなくちゃいけない我慢とか同仕様もなく無意味なこととかそんなものはねーんだよ。その我慢を無駄だと言うやつがいるならそいつのすべてを無駄だと俺が言ってやる。誰かが頑張っていることを必死にやりたくないのにやっていることを他人がとやかく言っていいわけないだろ」
そう言って少し間を置いてからまた
「お前はそこまで泣くほど頑張ってたってことだろ?それならお前の人生の中でその我慢も他人から見たら同仕様もなく無意味なこともそれはけして無駄でも無意味
でもない。出会って日が浅い俺が言ったんじゃ響かねーかもしれねーけど この数ヶ月お前を見てきた俺はそう思ってる」
その時[家のこと、クラスのこと、いじめの経緯すべてこの人に話して見てもいいのかな]
自然にそうに思っている自分がいた。
そう思える人がいるなんて思いもしなかった。
それからどれくらい泣いただろう めんどくさい人嫌いとか言っていた先輩はなぜか何も言わずずっと傍にいてくれた。
なにかを聞くわけでもなく、何も言わずただじっとそこにいてくれた。
そして涙が枯れたんじゃないかってくらい泣いた私はようやく話ができるようになりゆっくりと先輩にすべてを話すことにした。
「無理して話すことねーよ?」って言われたけど、今の私は先輩に聞いて欲しかった。
けして何を言われたいでもなくただ私の自己満足として聞いてほしかった。