先輩を巻き込んだお父さんとの揉め事のあとからまる1ヶ月経った12月の水曜日変わったことが2つ
1つ目はお父さんとのわだかまりがなくなり、関係性が少しだけいい方に向かったこと
暴言と暴力はなくなり、亭主関白かのような態度も無くなった。
記憶の中にある優しいお父さんに戻り始めた。
まだ昔のように仲のいい親子にはすぐにはなれないけど少しだけ良くなったのは1歩前進なのかなって思ってる。
2つ目は吉田さんたちが私につっかかってこなくなったこと
なぜなのかまるでわからなかった。
いじめがピタリと止まったのがお父さんとの揉め事が起きた次の日以降
SHRに吉田さんたちがいなかった日だ。
そして、その日以来吉田さんはクラスで誰からも相手にしてもらえていない孤立していることにも疑問を持っていた。
お父さんの問題といじめが両方同時に片付くなんて、偶然にしては出来すぎている
そう思った私は吉田さんたちに理由を聞こうと決めてその日は学校へと向かった
そして、いつも通り屋上で一日過ごした。
先輩が来たらなにか知っているか聞こうと思ったが今日に限って先輩は屋上には来なかった。
1日を屋上で過ごし、帰りのSHRが終わり教室にいる人がまばらになってきたタイミングで私は吉田さんに声をかけた「吉田さん ちょっと聞きたいことがあるんだけど今、いいかな?」と言うと「ちょうどよかった私もあなたに言いたいことがあったのよ」と言われ教室で話すような内容ではないから、旧校舎の空き教室に移動することにした。
何が起こるかわからないから、念の為スマホだけポケットに入れて行くことにした
空き教室についてドアを閉める
お互いに話すタイミングを伺っていたが、私は意を決して吉田さんに聞くことにした。
「なんで私につっかかってくるやめたの?」と切り出した。
「なに?つっかかられ続けたかったの?」と余裕たっぷりの声で言われ少しイラッとしたが「なわけ無いでしょ!突然なくなったから吉田さんたちが誰かになにか言われたのかなって思っただけ」という
すると吉田さんが突然「あんたでしょ!あんたがやめてもらえるように言ってくれって、先輩に言ったんでしょ!!」と怒鳴られた。
私はわけが分からず「どういうこと?全く話が見えてこないんだけど…」と返すと
「とぼけないで! あの噂のイケメンな先輩に呼び出されたから何かと思ったら、屋上に連れて行かれて、散々色々言われて私に恥を書かせたくせに!!あんたしかそんなこと指示できないでしょ。」と言われてしまった。
それを聞いて私の中で途切れていた糸が一つに繋がった。
3週間前に吉田さんたちは朝一で三影先輩に屋上に呼び出された。
そして、私のことをいじめてるという事実に対して「人としてありえない」「お前らみたいな人たちに好かれてるやつらが可哀想だ」などなどたくさん色々なことを言われたようだ。
そして、吉田さんはとりまきたちの前で恥をかかされた 私の方が被害者だと思っているようだった。
そして話の最後に先輩は彼女に「もう二度と冬菜に近づくな。わかったら早く消えろ 目障りだ」と告げた。
そして吉田さんたちを屋上から追い出した。
あの日、非常階段のところですれ違った吉田さんたちはやはり泣いたあとで、
あの日に限って私より先に先輩が屋上にいたのも吉田さんたちを呼び出していたからだったのだ。
「あんたのせいであのあと、何故かクラスに話が広がって私はいい笑いものよ。どう責任とってくれるの!」とまで言われてしまったが、私は[何もお願いしてないし、今の今まで知らなかったし…]と思い吉田さんに
「私は先輩に何もお願いしてないし、そもそもそうなるようなことをしていたのは吉田さん自身でしょ? それを責任転嫁して私のせいにされても私が困るから」と言ってからまずいと思ったが言い切ってしまったからもう後戻りはできない
「あんたの彼氏がそんなことしたのよ!なのに何も知らなかったとか意味分かんないからそんな見え透いた嘘つかないでもらってもいい!」と言いながら予想通り私のことを突き飛ばした。
私は尻もちをついたがそれでも負けじと私は「そもそも彼氏じゃないし、三影先輩が私の彼氏とか先輩に迷惑でしかないでしょ」という
これが吉田さんには良くなかった。
彼女は私の目の前まで来て、地面から足を少し浮かせていた。
とっさに[蹴られる]そう思って目を閉じ、覚悟を決めた時
ガラガラと空き教室のドアが開き、「なにしてんの?」と聞き覚えのある声がした
それにより蹴られることもなくその代わりに聞こえてきたのは吉田さんの震えた声だった。
「な、なんでこんなところにいるんですか?」と言う声と言い方が敬語なのを聞いた。
私はもしかしてと思い目を開けた。
空き教室のドアのところには三影先輩が立っていた。
「先輩…なんで」と言う私を見て先輩が「なんでそんな無茶ばっかりしてんだよ お前、やっぱり馬鹿だな。」と言われてしまう
そして先輩は吉田さんの方を睨みつけるように見て「あの時もう二度と近づくなって言ったよな? なんでまた同じようなことしてんだよ。そんなに俺にいたぶられてぇの?」と今まで聞いたことのないくらいの低い声で言う三影先輩
吉田さんは何も言えずただ泣いているだけだった。
そんな彼女を見向きもせず先輩は、私の腕を引いて空き教室から出た。
そして無言のまま屋上へと足を進めていた。
その道のりで私は、空き教室に閉じ込められていた時のことを思い出していた。
入学してから今までの先輩とのことを思い出していた。
私は、なにかあった時絶対と言っていいほど、先輩に助けてもらっていた。
先輩が来てくれると、不安も簡単に吹き飛んで、安心とドキドキが心を支配してく感覚になった。
でも、私はその気持ちに気づかないフリをしていた。
でも、もう自分の気持ちに嘘をつくことができないことに気づいていた。
そして、今日助けてくれた先輩を見て私はようやく自分の気持ちに嘘をつくのをやめようと思った。
[私、先輩が好きなんだ]