次の日の朝、リビングに行くとお母さんだけがいて父は昨日あれから帰ってこなかったという
どこにいるのかなと思ったけど、気にするのをやめた。
気にしたところで何かが変わるわけじゃない
そう思いながらいつも通りお母さんと2人で朝ごはんを食べ、学校への登校準備をして家を出た。
いつも通りの通学路、いつも通りの時間に学校までの道のりを歩く
学校の門をいつもの時間にくぐり、玄関に向かう
玄関に吉田さんたちがいないのを確認してから、上履きに履き替え教室へと向かう
教室につく前に吉田さんたちに小言を言われることを覚悟して教室へと入る
だが、今日は吉田さんたちが絡んでこなかった。
それどころか、教室に吉田さんとその取り巻きたちがいなかった。
[そんなこともあるんだな]と思いながら自分の席について外をぼーっと眺める
そうしているうちに担任の先生が教室へと入ってきて、SHRを始める
SHRの時間になっても吉田さんたちは帰って来なかった。
SHRが終わって屋上に行くために準備をして、向かっていると非常階段のところで吉田さんたちとすれ違った。
彼女たちはみんな泣いたあとのように目が真っ赤になっていた。
[なにかあったのかな? あの子達が泣くなんて珍しい]
なんてのんきなことを考えながら、屋上へ続くドアを開けると、珍しく先輩が先に屋上にいた。
「今日は来るの早いですね」と言ってから口を両手で押さえた。
それを見た先輩が「自分で気づいたな 敬語禁止って昨日言ったよな」
とツッコミが入った。
「はいはい。そうだね」と流すと
「ほんとに人の言ったこと流すの上手いな?」と言われたから
「先輩こそ人の言ったこと無視するの上手いよね」と言う
屋上にいたのは昨日の愛想のいい先輩じゃなくて、クールで素っ気ない先輩だった。
私はふと思い出して先輩に
「今日は吉田さんたちに何も言われなかったんだよね、SHRにもいなかったし…」と先輩に言うと「ふーん それは良かったじゃん」
相変わらず興味ないんだなとわかる声で言って来たから
「これを気になくなればいいんだけどね…」と言うと
「そんな何かを諦めたような顔するなよ。なくなると思うけどな」と言われた。
「それが本当だといいけど…」と言うと先輩は
「大丈夫だろ」とどこから出てきているのかわからない自信たっぷりな声で言ってきた。
[なんで言い切れるの?]と聞きたかったけど、先輩がこれ以上詮索するなと言わんばかりの態度だったからそれ以上の詮索をするのはやめておいた。
その日、先輩は午前中で屋上からいなくなり、戻っては来なかった。
私は、午後の授業の終わりを告げるチャイムと同時に教室に戻りSHRを受けて帰るために玄関へと向かい、家路についた。
その日も父は帰ってこなかった。
いつも通りの日常なのに父がいないだけで少しだけ非日常のような感覚がして仕方なかった。