帰宅してすぐにシャワーを浴びて自室でぼぉっとしていると、翠から電話がかかってきて、誰にも話すつもりなんてなかったのに、これまでのことを電話で伝えてしまった。

「うん、うん。そっか」

 翠は疲れているはずなのに、ずっと優しく返事をしてくれる。この人は聞き上手だ。

 翠たちは南浦と花火大会で会ったらしく、田中が俺の名前を出すと、気まずくなったらしい。

 一緒行くって一度も話してないし、酷い言い方かもしれないが、あさな以外と行くわけないのに。

 翠は田中と付き合うようになったことをきっと言いたかったはずなのに、それを知ったのは長電話を切る直前のことだった。