「あ、嫌、あの!いつも…鞄がパンパンなので何が入ってるのかな〜と思いまして…」
と言い訳をのべていると雨野さんはスッ…と僕にタオルを差し出した。
「え?タオル?」
僕は疑問に思いながらもとりあえず受け取ると雨野さんは言った。
「誰かが雨に濡れて風邪を引かないようにするためです。いつでも…タオルを渡せるように私はいつも持ち歩いているんです」
そう言った雨野さんの視線の先には雨が降る外をただ静かに見つめていた。
「ですがたまにタオル忘れてしまう時があるんです。持ったと思ったら違う鞄に入れちゃったりとか…結構するんです」
と少し面白おかしく笑いながら話す雨野さんを見て僕は…やっぱり雨野さんは忘れっぽいけどとても優しく温かい人だと、そう思った。
「そうなんですね!僕もよく忘れてしまうんですよ!」
たわいも無い話をしながら僕は雨野さんと教室へ一緒に歩いて行った。