「石濱(いしはま)さん、これお願い出来る?」

就職して数ヶ月が経ち、心月(みづき)は1人で仕事が出来るようになっていた。

上司から書類を受け取り、書類に書かれている数字を計算し、パソコンに打ち込む。

「石濱さん、今日は定時で上がっていいよ」

上司の言葉に、心月は頭を横に振る。

「わたしだけ早く帰るなんて出来ません…」

「え、だって今日、彼氏が大阪から来るんでしょ」

「あ」

「もしかして忘れてたの?」

「まぁ…はい…」

「ダメじゃん、プライベートも大事にしないと!」

「そうですね。
ありがとうございます…」

心月はあきれ顔の上司に頭を下げた。