そして、新たに演奏を始めた。

 穏やかで優しい音色。

 どんな曲名かは忘れちゃったけど、すごく素敵なことは分かった。

 って、そんな呑気に考えてる場合じゃないよ。

 どうにかして、踊ることを断らないと。

 普通に断っても、颯人くんは頭を下げちゃうから、なにかいい言い訳がないかな?

 私じゃなくてもっと素敵な人に選手交代しないと、颯人くんが可哀想だ。



「あの、私全然踊れないよ」



 これは本当。

 学校の授業でフォークダンスを踊ったことがあるけど、今の場面では使わないから。

 う〜ん、我ながらうまい言い訳かも。

 だけど颯人くんは笑顔を崩さなかった。



「大丈夫、エスコートをしてあげるから」

「あ、ありがとうございます……」



 ダメだった〜。

 もう!

 仕方がない。

 ここまで来たら、精一杯踊ってやる!

 やけくそになって、私は体を颯人くんに預けて力を抜いた。

 すると、とんでもないことが起こった。

 なんと私、踊ってるんだよ!

 ほえぇ!!!

 ターンをする度に、ドレスのスカートがふわふわと舞う。