空桜side


「父さん、再婚しようと思ってる。」

 突然、父さんからそう言われた。

 珍しく、美雷と望海が早く帰って来てみんなで俺の作った夕飯を食べてた時。


 仕事一筋だったから恋愛とかしてなさそうと思っていたけど違った。

 別に俺にとってはどうでもいい。

 どんな人かは知らないけどどうせ父さんが社長だからとか、顔がいいからって結婚するんだろう。

 父さんの見る目を馬鹿にしてるわけではないけど、父さんは人が良すぎる。

 変な人連れてこないかは心配ではある…。

 もし、変な人だったら学校の寮に住めばいいし…………。

「へー、そうなんだ。おめでとう。」

 美雷は他人事の様な顔をしている。

「どんな人?優しいの?」

 望海は嬉しそうに父さんに聞く。

「うん。すごく優しい人だよ。」

 そう言って笑う父さんの顔を見て、再婚相手はもしかすると、本当にいい人なのかも知れない。と思った。

 父さんは母さんが病気で死んでから、狂ったように働いた。

 見てるこっちが辛かった。

 何にもできない俺は悔しくなった。

 だから、料理とか、掃除とか父さんが少しでも楽になるよう覚えた。

 初めて俺が父さんに料理を出した時の笑顔と今の父さんの笑顔が重なって見えた。

「………良かったね。おめでとう。」

 そう言ったらみんなが俺の方をガン見して来た。

「…………………何?」

「「「………空桜が笑った。」」」

「珍しい……」

「ありがとな、空桜。」

「ねー、もう一回笑って見てよ!!」

 何なの、こいつら?

 いちいち笑ったぐらいで騒ぐとか。

 でも、こうやって話すのが久しぶりで楽しかった。