「‥‥‥う〜ん」



壁の向こうから聞こえる女の声に、俺はビクッと肩を震わせた。





‥そうだ。

昨日からこの家には彼女がいるんだ。





俺は携帯をマナーモードに設定して、寝間着のままリビングへ向かう。



母さんは――

帰って来てねぇか。





台所をあさって、俺は朝食の支度を始めた。



小さい頃からずっと、料理だけはできる。

めんどくさいからいつもは朝はコンビニで済ますんだけど、彼女――みづきの分くらいはちゃんと作ってやらなきゃ。





パンを焼いて、目玉焼きとベーコンを皿に乗せる。

ありがちな朝食メニューにラップをかけて、リビングのテーブルの上に置いておいた。





‥飯、ここにおいとくぞ。

って、伝えなきゃな。





母さんの部屋をあけると、みづきはまだ小さな寝息をたてていた。





「‥おい」


「んっ‥」





みづきは顔をしかめて、ゆっくりと体を起こす。