「‥うちの親に聞いてから‥」


「あら、もう坂下くんのお母さんには許可取ってあるわよ?」





すました顔で微笑む婦長。



‥あのババア、

見ず知らずの女の面倒を見るなんて俺が了承するはずないって思って知らないふりしやがったな。





相変わらず窓の外を眺めたままの女の子を横目で見る。



頭に巻いた包帯が痛々しい。



この子‥

どうして俺の上になんて落ちてきたんだろ?



まさか狙って落ちてきたわけじゃないんだろうけど‥

事故?

それとも‥





「―――いいですよ。しばらくの間、うちで面倒見ます」





冷たい言い方だけど、もし面倒臭くなったらすぐ病院に連絡すればいい話だし。





それに、

彼女をみているうちに、だんだん彼女のことを知りたくなってきたんだ。



名前



誕生日

好きなもの

住んでいるところ



俺は彼女のことをまだ何も知らない。





―――そう、

2人の出会いの意味すらも。





この頃の俺は何ひとつ、知っちゃいなかったんだ。