俺の姿を見て、
ペコリ、と頭を下げる彼女。



ふわっと、
栗色の髪が揺れる。



ここ、病院だよな。

ってことは、
この子すっぴん?

…なのに、
何だこのかわいさ。



「坂下くん?」



トリップしていた俺を呼び戻す、婦長の声。



「は、はい!」


「どうかした?」


「いや、ちょっと頭がフラフラして…」


「まぁ、ムリもないわよね。こんなかわいい子の前じゃ」



女の子は、

そんな婦長の言葉にも動じずにボーっと窓の外を見ている。



「とりあえず座って」


「あ、はい」



婦長にすすめられて、パイプ椅子に腰掛ける俺。

ただし、視線は女の子に向けたまま。

目が離したくても、離せないんだ。



「坂下くん、この子に心当たりは?」


「あるわけないじゃないですか!」


「やっぱり、そうよね…」



婦長は、ふぅ、と短いため息をついた。



「実はね、」


「…はぁ」


「この子、記憶がとんじゃってるみたいなのよ」