「………はい?」


「だから、あんたの上に女の子が落ちてきたんだって!」



母さんが、
言ってる意味がわからない?


女の子が落ちてきた?


…なんだ、それ。



「まったく、すごい確率よね。たまたま居合わせたあんたの上に落ちたおかげで、2人ともほぼ無傷なんて」


「…あの、俺、頭に怪我して包帯巻いてんだけど」


「そんくらい何よッ。たくさんの女をもて遊んだ天罰じゃない?」



病院だっていうことなんかお構いなしに、

豪快に笑う母さん。



…自分でいうのもなんだけど、

まさに

この親にしてこの子あり

ってヤツ?



こんな母親に育てられれば、女を恋愛対象に見られなくなるのもムリはない。

…うん。



「案外、あんたにぶち当たった女の子も、あんたに遊ばれた内の1人だったりして」


「まさか」


「そういえば、さっき看護婦さんがその女の子の病室に来るように言ってたわよ?」


「は?俺が?」


「あんた以外に誰がいるのよ?」



何で俺をこんな目に合わせた張本人に、
俺が会いに行かなきゃいけねぇんだよ。

めんどくせぇ。



…と言いたいところだけど、



「とっとといきなさいよ!まったく、大事な一人息子の危機に駆け付けた母さんに恥かかせないでよね」


「…ハイ」



これ以上、

鬼ババの逆鱗にふれるのはよくない。



「ん?なんか言った?」


「…何でもないデス」



俺はしぶしぶ立ち上がると、病室を出た。