「悪ぃ、大丈夫か? ……って、またおまえか」

 佐野先輩が、苦虫をかみつぶしたような顔であたしを見た。

「大丈夫です。っていうか先輩、グラウンドにいなくていいんですか?」

「苦手なんだよ、あーいうの」

「だったらやめてって言えばいいじゃないですか」

「……他のやつらは喜んでんだよ。『おまえのおかげでカノジョできた』とか言ってさ」

 あー、なるほど。そういうことね。

「だったら、いっそのこと先輩もカノジョ作ったら、こんなふうに騒がれなくなるんじゃないんですか?」

「だから俺は——」

「サッカーに集中したいんですよね? 知ってます。だからカノジョ作らないって。……あ、そうだ。だったらあたし、先輩のカノジョのフリ、しましょうか?」

「は? 結局おまえもそういう魂胆かよ」

 佐野先輩が、心底イヤなものを見るような目であたしのことを見てきた。