「その代わり……っつーか、ちゃんと当日やるから」

「……へ?」

 それって、どういう意味……?

「だっ、だから……察しろ」

 頬をほんのり染めてぼそぼそと言う由人先輩。

「……察しろ、じゃわからないんですけど」

 そういうあたしの声は、自分でも気づかないうちにちょっと震えてた。

「だっ……だから、デートするぞって言ってんの。付き合ってるんだから、デートくらいすんの当たり前だろ」

「だってあたしたち……」

「俺さ。やめたくねえんだけど」

「……」

「ヒナは?」

「あ……あたしも、やめたくないです」

「じゃ、そーいうことで」

 そう言うと、由人先輩はあたしの頭をポンポンとなで、ひらりと手を振ってクラスメイトの輪の方へと戻っていってしまった。