先輩、お返しもらいに来ました。

「ちょっと。さっきのやりとり、本当のカレシみたいじゃん」

 帰りの電車で、一花がつついてくる。

 一花には、結局あまりにいろいろ突っ込まれるのがウザくなって、由人先輩との契約について話しちゃったんだ。

「なにそれ!?」って最初はびっくりしてたけど、『まあ、これがきっかけで陽菜がちょっとでも変われば……』とかなんとかブツブツ独り言を言っていた。

 元々一花除けのためだったはずなのに。

 なにやってんだ、あたし。

「ヘンなこと言わないでよ。由人先輩とは別にそんなんじゃ——」

「陽菜はそうでも、佐野先輩はどうかなぁ~。ひょっとしたら、ひょっとするかもよ?」

 そんなことを言って、ニヤニヤする一花。

「だから、ないって! あたしは、由人先輩がサッカーに集中するのを邪魔するウザい女除けなわけ。だから、あたしがウザい女になってどーすんのって話よ」

 そう。あたしは、由人先輩のことなんか、絶対に好きになっちゃいけないんだから。

 ただの虫よけは、虫よけらしくしとけって話。