突然聞こえた不機嫌そうな男子の声に一斉に振り返ると、練習着姿の由人先輩が立っていた。

「さ、佐野くん。でも……」

「聞こえなかった? 迷惑だって言ったんだけど」

「ご、ごめんなさい……」

 今までに聞いたことのないような怒りのこもった低い声に、みんなびくっと肩を震わせると、そそくさとその場を去っていった。


「……由人先輩、すみません。練習の邪魔、しちゃいましたね」

「ヒナが気にすることじゃねーよ。俺のカノジョなんだから」

 ニセカノ、だけどね。

「それより、俺の方こそ迷惑かけたな。おまえがイヤならいつやめても——」