「練習って……」

「あー、そか。俺の下の名前は——」

「知ってます! 大丈夫です。由人先輩、ですよね? 有名人ですから」

「だから、そーいう言い方すんなっつーの。今度言ったら罰金な」

 本当にイヤみたいで、由人先輩は苦々しい顔でそう言った。

「罰金って……スポドリ奢るくらいしかできませんけど」

「それで十分。じゃ、楽しみしてるぜ……じゃなくて! 絶対言うなよな」

 何度も念を押すと、由人先輩は風のように走り去った。


 なにあの人。

 イケメンで有名?

 あの人も、実はサッカーバカの残念イケメンじゃん。

 あたしたち、意外と似た者同士なのかも。


 そう思ったら、ちょっとだけこの契約を楽しみにする自分がいた。