へぇ~、こんなふうに笑うと、一気に幼くなるんだ。

 グラウンドにいるときと全然違うじゃん。


 なんて思いながらも、


 この人が、カレシ?

 いや、フリだけどさ。

 あたし、本当にこの人のカノジョ役なんてできるのかなぁ?

 すぐにバレないか??


 なんて不安が、ちょっとだけ頭の中をよぎった。


 でもまあ、本当にムリなら、そのときにやめればいっか。

 深く考えるのが、面倒臭くなってきた。


「じゃあ、佐野先輩。あたし帰るんで。明日からよろしくお願いしますね」

「おう、気を付けて帰れよ、ヒナ」

「ち、ちょっと、いきなりなんですか!?」

 何気なく下の名前を呼ばれて、心臓がドキッと反応する。


 いや、ドキッてなんだよ。

 一花にだって、ずっとそう呼ばれてるのに。


「だって、俺のカノジョ役だろ? なんかさ、付き合ってるヤツとは下の名前で呼び合うのが普通みたいだし」

「普通の演技って、大変なんですね……」

「だなー。だから、ほら。おまえも一回練習しとけって」