「京都はどうだった?楽しかった?」
「うん!かなおねえさんのおみやげも、かあさまとえらんだの」
「えー、本当?嬉しいな」
「はやせさんにわたすって、とうさまが」
「うふふ、そっか。しっかりしてるね、すみれちゃん。お土産、楽しみにしてるね」

じゃあねーと、すみれと小雪に手を振って、叶恵は仕事に戻って行った。

またお絵描きを始めたすみれの横で、小雪はちょっと首をかしげて考える。

(さっきすみれちゃん、はやせさんって言ったわよね?はやせさん…おとといヘラヘラ星人さんが、総支配人の秘書の名前をはやせさんって言ってたけど、同じ人なのかしら。叶恵さんのお土産をはやせさんに渡すってどういう事?)

するとまたすみれが、あっ!と入り口に目を向ける。

叶恵が戻って来たのかと思ったがそうではなく、そこに立っていたのは山下だった。

ニコニコとすみれに手を振った後、そっと扉を開けて小雪に声をかける。

「今、大丈夫?」
「あ、はい。すみれちゃんだけなので」

山下は部屋に入ってくると、靴を脱いで絨毯に上がる。

「すみれちゃん、お兄ちゃんを覚えてるかな?りょうお兄ちゃんだよー」

すみれはちょっと恥ずかしそうに、こくんと頷く。

「わー、嬉しいな。お絵描きしてるの?新幹線かな、上手だねー。これは誰?」
「…きよじいじ」

小声ですみれが答える。

「え、おじいさん?あ!ひょっとして、清河さんかな?すごい!似てるね」

へえーと感心したようにすみれのスケッチブックを覗き込んでから、あ、ごめんね、邪魔しちゃったねと笑いかける。

そして山下は、小雪に向き合った。