その9
真樹子



5人での”今後”を決める”会議”は、およそ1時間半にわたったわ

その後、ヒールズには私と麻衣さんだけが残った

私たちはボックス席で面と向かって、ひとつひとつ”事案”を揉んだ

「麻衣さん、あの3人にはまだ早かったんじゃないかな。例の”想定”まで話すのはさ…。何分、未確定な要素が多い訳だし…」

私は麻衣さんに対して、あえて問題提議をしてみた

それに対して、彼女の返答はさらりとしたものだった

「さっき、あいつらに告げた”想定”が起こらなくても、はっきりと覚悟が計れたんですよ、今日。まあ、久美は別として、あれだけの実力者二人に踏み絵をさせた。へへへ…、それなりの局面となった際、奴らは馳せ参じるわ。それ、担保取れたんです。これは大きいですよ。その意味するところ、分かりますか?真樹子さん…」

いや、私にはわからなかった


...



その様子を察し、麻衣さんはさらにさらりとした調子で続けたわ

「リエと祥子の二人が、本気で私らの決起に参戦すれば、組織に属せず、エネルギーを持て余してるその辺のザコ連中が触発される。いっせいに蠢き出す。それこそ、一喝しただけでうじょうじょ集まってくるでしょうね。あの二人、そのくらいの求心力は有してるわ」

なるほど、そういう視点ね…

確かにこれから先となると…、”数”は大事になってくるしね、うん

「特にリエは、目の前のデンジャラスな場面には本能的に魅入られる体質みたい。一旦、スイッチが入ったら止まらない。でも、目的遂行のためであって、冷静さは失わないのよ。あいつは意志を持った”兵器”よ、真樹子さん」

ふうーっ、仮にも女子高生が”兵器”か…

仕事人から随分と、進化しちゃったじゃないのよ…(苦笑)


...



「そんでさ…、一方の祥子は、デンジャラスより目の前のカベに闘志を駆り立てられるんですよ、あのタイプは」

「でもさ…、麻衣さん!さっき二人が踏み絵としたその局面、ああ、想定か…。それ、”その”両方満たしてない?」

「アハハハ…、さすが、真樹子さんじゃん。さっきの想定に至れば、そのどっちもだし…。”そこ”持ってければ、あらゆる意味で最高に面白いのよ、真樹子さん!」

ハハハ…、まったくねえ

ますますイカレてきてるわ、麻衣さんは…

ここまでイカレ具合に磨きがかかってくれば、私もこの程度じゃついて行けないかな…(苦笑)