その5
夏美



「真澄がですか…?」

私はさらっと先輩に振ると、土佐原先輩も、さらっと答えてくれた

「うん、何でも真澄がさ、一昨日、街で偶然、先発隊のメンバーに会ったらしいんだ。それで時間の確認をされて、3時でしたよねってな。真澄はうっかりして、3時だよって言っちゃったそうなんだ。あとで4時だったと気が付いたけど、その子の連絡先は分からないしってことで、真澄が電話で相談してきたって訳でさ」

うーん、街で偶然ね…

「まあ、こっちは時間に余裕を持って機材とかも手配してたんで、少しばかりは調整できるから、じゃあ3時には行ってるよって答えたんだ。真澄も、そうしてくれないかなあって様子だったしな…(笑)」

なるほど…

先輩としては、3時に機材も運んでいつでも作業できる状態になってたわけだから、”6人”揃ってるんだったら、いっそ早めに取りかかろうという流れになったのね

これでカラクリがだいぶ見えてきたわ…


...



「とにかく、俺もうっかりしてた。設営後は川原を離れていたもんで、連中のやり取りまでは見てないからなあ。まあ、やたらなことは言えないが、血気はやってってとこなんじゃないのか…」

土佐原先輩は、とりあえず、若気の何とやらで許容しているようだ

「荒子、親衛隊とドッグスはこれからも、些細なことで衝突する要素が多々あるわ。集会の後、お互いしこりを残させないためにも、今の先輩の話も告げて、双方の誤解を解く場を持ったらどうかしら?」

「そうですね。集会後のテント内では他にも今後の方針とか、いろいろ話が出る訳ですし、これからのこいつらも何かと絡んでくるでしょうから。いづみ、集会が終わった解散後も、両メンバー全員には残るように言っといてくれ」

「了解…」

よし…、後は集会後ね


...



ひと通りみんなの反応を伺う限りでは、私と同じく裏にカラクリありと見ているのは鷹美だけかな…

他は、血気盛んな1年連中による、ライバル意識からの些細な原因で起きたいざこざという範疇で捉えている感じだ

今の段階では、皆、真澄の動きに不審がってる様子もない

いづみにしても、真澄からは余分なことは、特に聞かされていないみたいだし

ただ荒子は、この総集会前に軽率な乱闘騒ぎを起こしたことに対しては、双方ともにきちっとした対処を取る考えだろう

彼女の性格からすればごく自然な対応だろうけど、やけに表情が険しかったのが、ちょっと気になった

もしかして、他に何か懸念材料とかがあるのかな…

考えすぎかもしれないが

とにかく…、集会の後には、さらに何かが見えてくるかもしれないわね