先輩が見えなくなった途端、解放されたかのように身体のこわばりが緩んだことに気づいた。

かなり緊張していたらしく、胸もすごくドキドキしてる。

それくらい、夏海くんのことを話す先輩の雰囲気が怖かった。


気になるなら、自分で確かめるしかない。

そう結論付けたはずなのに、先輩の言っていたことがどうしても胸に重くのしかかってくる。


夏海くんは今までたくさん付き合った人がいたのかな。

ううん、あんなにかっこいいんだから付き合ってた人がいても当然だよね。

過去の彼女さんにも私にしてくれたように・・・告白をしたのかな。

私のことをいつも気遣ってくれてるみたいに、付き合っている相手に優しい顔を見せたのかもしれない。


自分の中に広がっていくよくわからないモヤモヤを振り払いたくて、私は頬を軽く叩いた。

小説の新刊はなんだか買う気分じゃなくなったので陳列に戻し、そのまま書店を後にした。