どんな君も、全部好きだから。

* * * *


連休明けて初めての水曜日。

テスト前ということで今週は委員会や部活などはないんだけど、なぜか私は夏海くんと一緒に下校している。

『ていうか委員会じゃない日も一緒に帰りたいし』とサラっと言われて、断る理由も思いつかなかったからなんだけど。

遅い時間でもないのに夏海くんを遠回りさせてしまっているのが心苦しい。


「もうみんながいても話しかけていいの?」


最近の私の変化に、夏海くんが期待を込めた眼差しで聞いてくる。


「そっそれは・・・あの・・・挨拶が慣れるまで、待ってほしいというか・・・」


初めて自分から挨拶した日からずっと、それは続けている。

でも教室では挨拶を交わすだけで心臓がはちきれそうになっているので、まだ普通に会話はできそうにないんだけど。


「ん。りょーかい」


夏海くんは嫌な顔一つせず私の気持ちを受け入れてくれて、私はまた胸がきゅうっとするのを感じていた。


「前さぁ送ったじゃん、どっか遊びに行こって」

「は、はい!」


いつその話をするのかなって実はずっと気になっていたので、私は思わず大きな声で返事をしてしまった。


「今度は俺が行くとこ決めていい?」

「う、うん、いいよ」


夏海くんと仲良くなりたいという想いが自分の中にあることを自覚したから、もう誘いを断るという選択肢は思い浮かばなかった。

前は私に合わせてもらったんだから、次は夏海くんの行きたいところに決めてほしい。


「ありがと、考えとく。テスト終わったら行こ」


こうやって男の子と遊ぶ約束をしていることが、なんだか不思議な感じだった。