「賢斗の部屋エアコン効いてると思うから、ゆっくりしていってね」

「えー、私もうちょっと優依ちゃんと喋りたいんだけど」

「私も~。賢斗が彼女連れてくるっていうから、わざわざバイト休み入れたんだよ」


お母さんが夏海くんの部屋に促してくれたけど、お姉さんたちは不満そうだ。


「いきなりあんたたちの相手させられたら疲れちゃうでしょうが」


お母さんの言葉に「まぁ確かに」「しょーがないか」と納得し合ったお姉さんたち。


「賢斗、飲みもの取りに来てね」

「ん、後で行くわ。優依、こっち」

「あ、はい、おじゃましますっ」


お姉さんたちから逃げるように階段の方へ歩いていく夏海くん。

私はお母さんとお姉さんにおじぎをしてから、夏海くんの後について階段を上った。


二階に上がって、二つ目の扉のドアノブに手をかけた夏海くん。

扉が開いた瞬間、エアコンの心地良い冷気が流れ出てきた。

入った瞬間、夏海くんの匂いがした気がしてきゅんとしてしまう。

夏海くんの部屋は白と黒のカラーを基調としていて、物が少なくすっきりとした雰囲気だった。