「・・・あの三年のこと好きなの?」


ぽつりと降ってきた夏海くんの問いに、私は顔を伏せたままふるふると首を振って否定する。


「俺のこと嫌いになった?」


ぜったいにあり得ない質問に、さっきよりも激しく首を振って否定する。


「・・・じゃあまだ待ってちゃダメ?優依が俺のこと好きになってくれるまで・・・いくらでも待ちたい」


夏海くんの懇願するような、すがるような声音に胸が締め付けられた私はやっと顔を上げた。

悲しみを帯びた夏海くんの眼差しにとらえられて身動きができなくなってしまう。


でも、もう私のことでこんな顔をしてほしくないから。

いつまで経っても自信をもてない私のことなんて、もう忘れてもらう方がいい。


「もうこれ以上待ってもらうのは・・・無理です」


小さな声でそう伝えた。

私を見つめる夏海くんの瞳からスッと温もりが消えた気がして、胸がズキンと痛みだす。


「・・・わかった。しつこくしてごめん」


力ない声でそう言った夏海くんは私に背を向けて歩き出した。

もう夏海くんが私の方に振り向くことはないと思ったから、涙が溢れてくるのを我慢しなかった。