どんな君も、全部好きだから。

「参考書探しもいいけど、ちゃんと寝なよ。疲れた顔してる」


そう言った先輩が私の頭に優しくポンと触れたので、私は驚きのあまり目を見開いてしまった。

先輩はそんな私を見て笑いながら「じゃあね」と言って店を出て行った。


さっきの頭ポンは・・・びっくりした。

何だったんだろう。

あまりに疲れた顔してるから元気づけてくれたのかな・・・?


確かに最近いろいろありすぎてよく眠れていなかったな。

今日は宿題だけやって早く寝てしまおう。

そう決心しながら、私は先輩がおすすめしてくれた参考書を手にレジに向かった。


お金を払い終えてお店の自動ドアに目を向けたとき、そこに立っている人物を見て心臓が跳ねる。

つい一時間ほど前に家まで送ってくれて別れたはずの夏海くんが、息を切らしながら店内をきょろきょろと見渡していたから。

私の姿を見つけて足早に近づいてきた夏海くんは、「レジ終わった?」と低い声で聞いてきた。

その威圧感に圧倒されて言葉が出ない私はコクリとうなずく。

それを確認した夏海くんは私の右手首を掴んで、店の外へと引っ張っていった。