どんな君も、全部好きだから。

「・・・夏海くんが、最近クラスのみんなにも壁を作ってるような気がして・・・孤立してしまうんじゃないかなって心配です」


最近の夏海くんは周囲の人に必要以上に冷たい態度のような気がしてしまって。

みんな話しかけづらそうにしているのが見て取れる。


「あいつが好きでやってることなんだろうから、早坂さんが気にしなくていいんじゃない?」

「でも・・・」

「あいつが周囲に牙むいてるおかげで早坂さんが嫌がらせされないんだったら、それでいいじゃんって俺は思うんだけど」


私も嫌がらせをされるのはやっぱり嫌なので、それを防いでもらえているなら確かにありがたいんだけど。

でもほんとうは優しい夏海くんが、これ以上誤解されてしまうかもしれないことを考えると悲しくて仕方なかった。


「まぁ、早坂さんはそんなふうに思わないか」


黙り込んで納得できていない態度の私に、先輩はふっと笑いかけた。

そしておもむろに数学の参考書を一冊棚から抜き出して、


「俺のおすすめ参考書。前におすすめ本教えてくれたからお礼に」


と私の前に差し出した。


「あ、ありがとうございます・・・」


私は目をぱちくりさせて参考書と先輩の顔を交互に見つめる。