私は力をなくした身体を壁に寄せて、ズルズルとその場にしゃがみこんだ。


夏海くんの優しさに甘えるだけ甘えて、いつまでも猶予があると思ってしまっていた。

夏海くんみたいな素敵な男の子が、こんな私を待ってくれていることが申し訳なくて仕方ない。


だって、今でもやっぱりまだ、夏海くんの『彼女』になる自信がまるでないから。

やっぱり私は、夏海くんに相応しくない。


「はやく・・・返事しなくちゃ・・・」


そう呟きながら、夏海くんの優しい笑顔と声を思い出して涙が溢れそうになる。

ほんとうにすぐにでも断らなきゃダメかな・・・?

夏海くんが許してくれているなら、このままそばにいてもいいんじゃない?

そんなことを考えてしまう自分のズルさに気づいて、また自分を嫌いになる。


「優依」


しゃがんで涙をこらえている私の耳に、ふいに優しい呼びかけが聞こえてくる。

ゆっくり顔をあげると夏海くんが心配そうな顔で駆け寄ってくるところだった。