「・・・早坂とは“まだ”付き合ってないけど、もし早坂に何かしたら誰でも許さねーから」


こみ上げてくる苛立ちに冷ややかな笑みを浮かべながら、ここにいる人間すべてにそう忠告した。

俺の有無を言わさぬ威圧感に、教室内が静まり返る。

はっきりとした言葉は言わなかったけど、これでもう『俺が優依のことを好きなんじゃないか』という噂は広がってしまうだろう。

彼女のことをよく思わないヤツも出てくるかもしれない。

でも優依が誰かに傷つけられることはぜったい許さない。

何があっても優依を守る。その決意はとっくに固いものになっていた。


「はいはい、みんな賢斗に群がりすぎだって~」


重苦しい空気の中、ひときわ明るい声で俺の周りの女子たちをたしなめたのは神崎だった。


「そんな大勢で詰め寄ったら賢斗困っちゃうじゃん。賢斗が特別扱いする子がいたって何もおかしくないでしょ?」

「で、でも・・・私たち賢斗くんと付き合うのは彩香なのかなって思ってたし・・・」

「そうだよ、夏海くんは彩香ちゃんみたいな子がお似合いだってみんな言ってるよ」