「俺の知ってる子が去年の今ごろあいつと付き合ってたんだけど」


いろいろと思い出してドキドキしていたら、ふいに先輩が夏海くんの過去の彼女さんの話をし始めたので、私は勢いよく先輩の顔を見上げた。


「付き合って三週間も経たないうちに急に振られたって泣いてた。その子とあいつ中学も同じらしくてさ、告白されたら誰でも付き合ってたって言ってたんだよね」


先輩は無表情で淡々と話していてその感情は読み取れない。

でも、今までのように不快感や嫌悪感を帯びた雰囲気はなく、ただ事実をそのまま話している感じだった。


「俺はあいつと話したことはないけど、知ってる子が泣かされたからもうそういうヤツだって思ってる。でもこれからは早坂さんにそういう考えを押し付けたりしないから安心してよ」


私の方に身体を向き直した先輩は、


「あいつのことはどうでもいいけど、早坂さんには興味あるからこれからも話しにくるね」


とフッと笑って言った。

わ、私に興味があるってどういうこと?!

私のこと面白いって言ってたけど、期待されても何も面白いこと言えないんだけど・・・。

「じゃあね」と言って去って行く宮田先輩の後ろ姿を見ながら、私はしばらく動けないでいた。


なんだか本を読む気分じゃなくなっちゃったな・・・。

いろいろありすぎてどっと疲れたというか・・・。


やっぱり今日はもう帰ろうと思った私は、手に持っていた本をノロノロと棚に戻し始めたのだった。