コンコンコンッ。
部屋のドアをノックしても返事はない。
やはり寝ているようだ。
静かにドアを開け、中に入る。
南側に面した大きな窓にはレースカーテンが設けられていて、陽の光が優しく差し込む。
その窓の隣にある窓際に彼女のベッドがあり、彼女が静かに寝ている。
部屋はくの字型に作られていて、12畳くらいだろうか?
結構広い間取りで、ベッドが置かれている部分とは区切る形で部屋の6割を占めるくらいの広さのアトリエらしき部分がある。
床がテラコッタ調になってて、子供部屋には不釣り合いの手洗い用の水栓まである。
絵具を使うことも多いから、画材や手を洗うためのものだろう。
壁一面に棚が誂えてあり、描いた作品が飾られていたり、資料と思われる分厚い本が幾つも置かれている。
更には、画材道具用の棚であったり、イーゼルや未使用の木製パネルやキャンバスが置かれている。
絵を描くための部屋。
まさしく、アトリエそのもの。
空気清浄機がフル稼働してるが、仄かに絵具の匂いがする。
ベッドの横に勉強机やクローゼットがあり、女の子らしい色調にほんの少し安堵感を覚えた。
俺も楽器や関連のもので埋もれた生活をしてるけど、同じように彼女は絵に関するもので埋もれてる感じ。
見ている世界は違えど、きっと同じような思いを抱いてるはずだから。
足音を立てずに静かに彼女に近づき、そっと額に触れる。
熱は無さそうだ。
静かに寝息を立てながら、普段と違う雰囲気の彼女がそこにいた。



