彼の素顔は甘くて危険すぎる


話を聞くと、風邪を引いて、熱は下がったけれど、食欲がないらしい。
年末年始も無休で診療するスタイルの病院らしく、疲れが溜まった所で免疫が落ち、風邪を引いたのだと。
ぐっすり寝れるようにと睡眠導入剤が施され、今彼女は寝ているらしい。

「加奈ちゃん、悪いけど部屋案内して貰える?キッチンにあるもの、適当にお願い」
「はい、分かりました」
「彼氏くん、ゆっくりしていってね」
「……はい」

とりあえず、第一関門突破したらしい。

明るい性格の母親だと彼女から聞いていたが、本当に垢抜けている。
サバサバとしているというのが正しいのか。
とにかく、『彼氏』として反対はされてなさそうだ。

「こちらにどうぞ」
「あ、はい、すみません」

母親は診察に戻って行き、その同じ扉の奥へと誘導される。
どうやら、自宅へ行くには院内を通過しないとならないらしい。

スライド式のドアをくぐると、看護師や受付の事務員と思われる人たちが廊下に面した所に勢揃いしてるっぽい。
完全に上野公園のパンダ状態だ。
恐らく、『ひまりの彼氏が来た』と伝わっているのだろう。

「こんにちは~」

その視線に耐えながら、軽く会釈し病院奥へと向かう。

「このスリッパ使ってね」
「はい、お借りします」

自宅部分へはくの字型の廊下の奥にあるらしい。
病院の雰囲気とは全く違う色調で、欧風な感じの造りになっている。
白を基調としていて、明るい色目の床にお洒落な花柄の壁紙。
所々に飾られている絵は、ひまりが描いた絵だと思われる。
フレームの下に『〇〇年△△美術展□□賞』と書かれているから。

玄関の正面にある階段を上がり、2階へと。