彼の素顔は甘くて危険すぎる


突然、受付の女性に『ひまりちゃんの彼氏さん』と言われた。
確かに、そうかもしれない。
いや、正確には『偽』が付くんだけど、まぁいいか。

「……はい」
「今、真希子先生呼んで来ますね」
「……すみません」

緊張する。
だって、真希子先生ってひまりの母親だよな?
覚悟はして来たけど、やっぱり緊張するもんだな。

自宅を訪問するとあって、学校仕様の無造作ヘアーではさすがにヤバいと思い、駅のトイレで『SëI』仕様に整えて来た。
もちろん眼鏡も外して……。
だけど、自宅が病院ということもあるから、マスクだけはしている。

まもなくして、受付横のドアからスレンダーな中年女性が現れた。

「ひまりの彼氏くん?」
「初めまして、不破と言います」
「わぁ、ホントにひまりの絵とそっくりなイケメンくんなのね♪」
「え?……あ、いえ、とんでもないです」
「その後、体調はどう?薬はちゃんと飲んでる?」
「はい。その節は大変お世話になりました。有難うございました」
「少しでも痛みがある時は、直ぐにかかりつけの病院に行くといいわよ」
「……はい」

緩く纏め上げられた髪は少し茶色くて、マスクに覆われていない部分がひまりによく似ている。
黒々と大きな瞳で少し垂れ目な感じと、色白で華奢な雰囲気がそっくり。
彼女は母親似らしい。

「ひまりのお見舞いに来たのよね?」
「あ、はい。会えますか?」
「えぇ、大丈夫よ。ただ、ついさっき点滴開始したばかりで、今寝てると思うけど……。そのうち起きるから上がって待ってる?」
「いいんですか?」
「もちろん」