彼の素顔は甘くて危険すぎる


午前中の受付時間を終了してもまだ診察待ちの子供が24人もいる。
今日も午後の診療時間まで休み無しになりそうだ。

「ひまりちゃん、上でお昼して来ていいよ~」
「夏木さん、まだ大丈夫ですよ?」
「いいの?」
「はい」
「本当に助かるわ」

事務の夏木加奈子さんが声を掛けてくれた。
とはいえ、他のスタッフも誰一人休憩には入れない。
それなのに、私だけお昼するのも気が引けるし。
何より、目の前のこの子達だってお昼ご飯も食べずに我慢してるんだもん。

「じゃあ、次はペープサートするから、好きなの選んでいいよ~」
「やったぁ!」
「わたし、バナナの親子がいい!」
「ぼくは、はたらくくるまっ!」
「はいはい、順番ね~」

このペープサートの絵も私が中学生の頃に描いたもの。
色んなキャラクターや子供向けの歌など使って沢山作って来た。
年季の入ったものも多く、そろそろ新調しないとならなそう。
あとで新しいのを作らなくちゃ。

***

宅配のお弁当業者に注文していて、交替でお昼ご飯を食べる。
今日のお弁当は鯖の味噌煮定食らしい。
しっかり味が染みててとても柔らかい。

「ひまりちゃん、彼氏がいるんだって?」
「ッ?!……誰からそんな話を?」
「真希子先生(母親)」
「え……」
「どんな人?イケメン?学校の人?」

お母さん、ホント口が軽すぎる。
彼の家に毎日通うようになって、『友達』って伝えたのに勝手に『彼氏』と変換してるし。
これまでの経緯を説明するのも変だから、この際、『彼氏』ということにしておこう。

だって、偽はニセでも、キスした仲だしね。

「イケメン………だと思います」
「きゃぁ~っ!いいなぁ♪若いっていいよねぇ~」
「ほ~んとっ」