彼の素顔は甘くて危険すぎる


18時過ぎ。
帰宅するため、駅のホームで電車待ちの俺ら。
彼女は『寒〜い』とコートの襟を立てて身を縮こませている。

「俺さ、冬休みは両親がいるロサンゼルスに帰るから」
「そうなんだ」

大して気にも留めず、サラッと流された。
やっぱり、俺がいようがいなかろうが変わらないらしい。

「始業式の前日に帰ってくるから」
「はーい」

軽く傷つくな、これ。

「冬休み中は1人でウロウロすんなよ?」
「ウロウロって、酷いなぁ。子供じゃ無いんだから大丈夫だよ」
「誰かに声掛けられても軽くスルーして、ナンパされたらさっき撮ったやつとか見せんだぞ?」
「分かってるって」

何日か前からお互いのスマホで、少しづつ写メ撮ったり動画を撮ったりして来た。
言いよる男を撃退するのに一役買うだろうけど、本当は俺自身が彼女の画像が欲しかったから。
1週間も会わずに我慢するとか、拷問でしか無い。
帰らなくていいなら、帰りたくないし。
彼女を野放しにするのはホントにマジで気が狂いそう。
コンビニに1人で買い物に行くのもやめて貰いたいくらい、心配だし不安だし、それだけ惚れてる証拠だ。

「ホントに言ったこと、わかってるか?」
「大丈夫だって。しっかり覚えたから」

いやいや、覚えたかどうかを聞いてんじゃねーよ。
理解したかどうかを知りたいんだって。
ホントわかってねーなぁ。

危なっかしくて、この手が離せない。

色白で細くしなやかな指先をしている彼女の手。
こうして手を繋いでるのに、照れる事もしない。
俺を男として意識してない証拠で。
どうにかして、今すぐにでも意識させるには…。