偽彼氏になって半月。
彼氏らしいことは殆どしてない。
昨日、例のイカれた野郎を撃退したけど。
正直まだ諦めてなさそうな気配もある。
だからこそ、彼女の傍から離れらない。
俺のいない所で、誰かに触られたりするかと思うと落ち着かいない。
彼女に警戒心を植え付けはしたけど、正直不安。
だって、隙があり過ぎる。
手を伸ばせば簡単に触れられるし、いつでもキス出来ちゃうほど、ガードが甘い。
護身術用に、蹴りやパンチを覚えさせた方がいいかな。
***
スタッフとの会話でも、それ以外の時でも。
会話の中に『デート』や『彼女』といったフレーズを盛り込んでるのに。
彼女の表情が殆ど変わらない。
驚きはしている。
してるんだけど、何て言うか……。
『恋愛』『恋人』『彼氏』という概念がないのか。
軽くスルーされてる気がする。
天然なところは多々あるけけど、俺を『男』として見てないと思う。
『偽彼氏』という枠組みだから、スルーしてるのかもしれないけど。
この境界線をいい加減なくしたい。
じゃないと、このままじゃ、キス以上のことが出来ないじゃん。
さすがに、俺はよくても。
彼女は到底受け入れがたいと思うから……。
『クリスマス・イブ』という魔法を使って、彼女との距離感を一気に縮めたい。
だって、あと数日したら……俺、日本を離れるし。
暫く会えない時間、不安にならずに済むようにしておきたい。
**
可愛すぎる。
アイスを頬張る顔。
小さな口で必死に食べてる。
『美味しいぃぃっ』って、堪らな~い!みたいな表情。
それが堪らなく可愛いっての。
アイスを掬ったスプーンを持つ彼女の手を掴み、自分の口へと。
「うまっ」
「どろぼーっ」
「これ、俺が買ったやつ」
「あ……」



