彼の素顔は甘くて危険すぎる


店を出ると、すぐさままた私の手を握る彼。
別に迷子になったりしないのに……。

「不破くん、……手」
「ん?……俺の手、あったかいでしょ」
「………」

そういう意味じゃないのに。
だけど、詐欺男と違って、触れられても嫌な気は全然しない。
何でだろう?

クリスマスムード一色の街中を彼と手を繋いで歩く。
歌の歌詞にあったワンシーンみたいで。

白い息が見える距離は、手の届く場所にいる証拠。
長い睫毛が上下に動くのが分かるのは、それだけ瞳を見つめてるから。
脚の長さが違うのに、進むペースが同じなのは……。
相手のことをちゃんと想ってる証。

それら全てが、同じ瞬間(いま)を過ごしてるということ。

***

「アイス食べたい」
「こんなに寒いのに?」
「走ったら暑くなるでしょ」
「え?……ん!えぇ~っ!」

彼はおもむろに走り出した。
私の手を掴んだまま。
仕方なく、頑張って走る。

暫く走った先にあったアイス屋さん。
当然、彼は店内へと行こうとする。

「まっ……てッ……ッ……」

息が切れて上手く喋れない。
それでも彼は手を離そうとせず、ずんずんと無言で店内へと入って行く。

「ひまり、食べたいの指差して」
「ふぇっ?」

ハァハァと息だけが漏れながらも、ストロベリーチーズケーキとチョコチップクッキーのアイスを指差す。
すると、彼は自分のチョコミントとラムレーズンと一緒に私の分も注文してくれた。
もちろん、お会計も。

息が整う頃にアイスを手渡され、店内奥の席に座る。
やっと一息つけそう。

大好きな味のアイスをスプーンで掬い、一口頬張る。

「ん~っ、美味しいぃぃっ!」