月末の土曜日だからなのか、結構人が多い。
カチッとしたスーツを着こなすサラリーマンやOLが千鳥足ですれ違う。

22時を過ぎようとしていて、補導されたらどうしようと気ばかりが焦る。
急ぎ足で駅へと向かっていた、その時。

「どこ行くの~?お兄さんたちと飲まない?」
「一人なの?急いでるみたいだけど、誰かと待ち合わせ~?」

突然行く手を阻まれた。
大学生風の若い男性二人組に。
アルコール臭が凄くて、完全に酔ってる。

「ごめんなさいっ、彼氏と待ち合わせしてるので!」

彼氏なんて、生まれてこの方いないんだけど。
そんなことはどうでもいい。
以前『友達と待ち合わせ』と言ったら、『友達も一緒に』としつこかった。
それに『もう時間が遅いから帰らないと』なんて口走ったら、『高校生』だと言いふらしてるようなものだし。
酔っ払いに何を言ってもほぼ聞き流される。

で、経験値から『彼氏と待ち合わせ』というワードが一番効き目があると知っている私は、咄嗟に口にして足早に彼らを交わした。

「こんな時間に彼氏と待ち合わせって、どこで~?お兄さんたちが送っていってあげるよ~?」
「ッ?!……離して下さいっ!」

うわっ、この人らめっちゃしつこいっ!
腕を掴んで足止めしようとして来た。

「待ち合わせに遅れちゃうので離して下さいっ」

半ば強引に引き離すつもりで力を目一杯入れて腕を振った、その時。

「あっ……ッ?!」
「………平気か?」

大学生風の男性二人組が腕をパッと離したお陰で抵抗を失った私の体は後ろへと。
しかも、その体を見知らぬイケメンが受け止めた。