防音室内は暖房がついてて、寒くはない。
だけど、さすがに直に床に座ると、冷たさはある。
それを気にした彼。
一応、『女の子』扱いはしてくれるらしい。
この前は、あの壁に押し付けて無理やりキスしたのに……。
「この部屋飲食禁止だけど、その場所なら楽器から遠いから食べたり飲んだりしてていいから」
「……ありがと」
イケメン王子は、意外にも気が利くらしい。
もてなすつもりでご飯作ったのに、なんかこっちがもてなされてる気がする。
ダメダメ、集中しないと。
せっかくチャンス貰って堂々と描けるようになったんだから、この機会を無駄にしないようにしなくちゃ。
A4とB4サイズのクロッキー帳を開き、鉛筆が入っているケースを取り出す。
6Bから2Hまでの硬度別に纏められた鉛筆の中から2Bの鉛筆を取り出し、描き始めた。
楽譜を見つめる瞳は真剣そのもので、その瞳が閉じられ何かを感じ取るかのような表情を覗かせ、キーボードの鍵盤に指が乗せられる。
学校では見せないそれらの表情は、言葉に出来ないくらいカッコよく見える。
***
「腹減った」
「……え?あ、はいっ」
夢中で描いてて、彼が目の前に座り込んでるのに気が付かなかった。
お腹を空かせた子供みたいな顔して見つめられる。
「今温め直すね」
「すげぇ」
「ん?」
「あの短時間でこんなに描いたの?」
「………ん」
だって、次の機会がいつになるか分からないもの。
制限なしとはいえ、毎日通ったら絶対引くもん。
「これも、……すげえ」
「あっ、………だよね」
軽く30本以上はある鉛筆の多さに驚いてる。



