彼の素顔は甘くて危険すぎる


母親に慢性虫垂炎の経過観察のことを聞いたら、服薬や睡眠も大事だけど、食事管理も大事だと教わった。
それに手術をしない分、再発することもあるから、気を付けないとならないらしい。
だから、少しでも再発の恐れを回避できるなら、食事くらいはみてあげたい。
ご両親がいなくて、一人で生活してる彼を。

***

ピンポーンッ。

カチャッと開いたドアの奥から、彼が顔を出す。

「どうぞ」
「お邪魔しますっ」

二回目でも緊張する。
だって、前回、この家で彼とキスしたんだもん。
無意識に思い出すあの日の感触。

「ん、どした?」
「あ、……何でもない。生姜焼きみたいなものでも平気?」
「おっ、いいねぇ」
「先に準備だけしちゃうね」
「じゃあ、俺、向こうにいるから」
「ん」
「あ、そうだ。これ、食費な」
「え、いいのに……」
「菓子とかジュースとか、欲しいもんあったら一緒に買ってくればいいよ」
「………ありがと」

意外と律儀な性格してるらしい。
ちゃんと封筒にお札が入ってる。
しかも、五万円も。
さすが、セレブは違いますな……。

前回来た時に調味料や食料を確認しておいたから、足りなそうなものを買って来た。
彼にバレないようにゴミ箱を確認すると、やっぱりファストフードの容器ばかりが目に付く。

これじゃあ、再発してもおかしくない。

***

夕食の準備をほぼ終え、彼がいる防音室のドアを開けると、彼はキーボードを弾き、楽譜を作っているようだ。

「椅子やテーブル使う?」
「あ、大丈夫」
「床でいいの?」
「うん」
「あ、じゃあちょっと待ってて」

一旦部屋を出て行った彼は、クッションとひざ掛けを手にして戻って来た。

「女の子なんだから、冷やしちゃまずいだろ」
「っ……」