彼の素顔は甘くて危険すぎる


「で?……追加オプション要らないの?」
「えっ?」
「今しか付けれないよ?あとで、は無いから」
「………急に言われても」
「じゃあ、駅に着くまでな」
「えぇ~っ?!もう着くじゃん」
「フッ」

駅はもう見えてる。
国道を渡ればすぐ着く距離。
辛うじて信号待ちで足止め喰らってるけど、すぐに青になるし。
隣りで動揺してる彼女を見つめ、笑みが零れた。

「青になったぞ」
「え、えぇ~っ」

容赦なく歩き出す。
今日は18時からレコーディングが入ってて、あまり余裕がない。

「決めたっ!」
「ん?………何?」

制服のブレザーの裾を引っ張られ、仕方なく立ち止まる。

「回数制限なしで描かせて」
「……回数制限なし?」
「うん。不破くんの都合のいい時でいいから、時間が許す限り、いつでも幾らでも描かせて欲しい」
「何、俺のファンになったの?」
「ファン?……ではないと思う」
「え?」

ファンでもないのに、好きなだけ描きたいって……。
本当に描くことしか、コイツの頭には無いのかよ。

「あのね。二科展って知ってる?」
「二科展?」
「そう。絵画や彫刻の展覧会なんだけど、毎年9月に一回しかなくて、来年のそれに応募したいの」
「………あ、そういうこと」
「ダメ?」
「いや、ダメとかじゃないけど。俺を描いた絵を出すってこと?」
「……多分。イメージ的にはそうなるかな」
「へぇ~」

何かよく分からないけど、脳内ではきっと何か既に決めたことがあるんだろう。
曲作りも似たようなものだから、何となく分かる。

「いいよ」
「え、本当に?」
「ん。描きたくなったらいつでも声掛けて」
「……ありがとっ」
「じゃあ、レコーディングあるから、もう行くな?」
「あ、時間取っちゃってごめんねっ」

謝る彼女に片手を振りながら駅構内へと向かった。