自宅に到着して、部屋を暖める。
ひまりは荷物を下ろして、冷蔵庫を確認し始めたと思ったら……。
「不破くん」
「ん?」
「それとね、お願いというか、予約しておきたいことがあるんだけど」
「え、……何?」
リビングにいる俺の元に来て、真剣な表情を浮かべながら、彼女の人差し指が俺の臍の辺りに向かって来た。
「これ」
「ん?」
「このボタン、卒業式にちょーだい」
「……あ、これか。ん、いいよ」
「予約したからね?可愛い後輩の子にせがまれてもあげないでね?」
「何、それ」
「だって、後輩の子たちが更衣室で話してたんだもん。不破先輩から貰うって」
「フフッ」
ひまりにしては珍しく嫉妬してくれたらしい。
まだ卒業まで3ヵ月もあるのに。
今から敵対心丸出しで、予約までしようとするとか……可愛すぎ。
上目遣いの彼女の腰に手を回し、抱き寄せて。
「俺、そんなに信用無い?」
彼女の耳にそっと囁く。
こんなにも一途なのに、不安にさせるようなことしたっけ?
「ひまり以外は眼中にないんだけど?」
「っ……」
「予約には手付金が必要って知ってた?」
「えっ?」
「さて、何して貰おうかな~♪」
「えぇぇぇぇ~~っ」
先月のお泊りの一件以来、ひまりとの関係は一気に進んだ気がする。
そりゃあ、あれだけ腹割って話せば、相手の気持ちも分かるってもんなんだけど。
「ひまりはさ、俺のこと、いつまで『不破くん』って呼ぶつもり?」
「え?」
「名前あるんだけど」
「………そうだよね」
「まぁ、無理にとは言わないけど」
「ごめんね」



