彼の素顔は甘くて危険すぎる


12月1日、『SëI』の1st アルバムとニューシングルの予約開始日。
某大手CDショップの店頭には、開店前から大行列が出来ている。

正午からネットでの予約販売も開始されるが、某大手CDショップの限定店舗による店頭予約のみ、抽選でサイン入り手帳が貰えるとあって、前日の夕方から予約する為に並ぶ人も続出する有り様。
それが、テレビ中継されるなどして、空前のブームが巻き起こっている。

12月の寒風吹きすさぶこの時期に、徹夜して並ぶ人々の為に、Rainbow Bridge の事務所では、サプライズ対応で珈琲カーとうどんカーを配置させた。
この神対応とも言える対応は、多くのメディアでも取り上げられ、『SëI』の知名度はますます急上昇。

更には、これまでの作品と異なり、ひまりが絵師として加わったことで幻想的な世界観が表現され、『ℋℯ』という絵師に関しても大注目され、今や時の人となった。

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「ひまり、年末年始はどうすんの?」
「……まだ、決まってない」

12月10日、期末試験も終え、漸く一息つけるようになったある日。
不破は帰宅途中の電車内でひまりに確認する。

親との約束でロスに帰省しなければならない不破。
夏休み同様、ひまりも一緒にと考えてはいるが、小児科にとって冬場は患者が一気に増える時期でもある。
毎年自宅の小児科を手伝っているひまりのことを考えると、迂闊に誘うのはよくないと思って……。

「あのね」
「ん?」
「私もメディア非公開にしようかと思ってるんだけど」
「へ?」

会話になってないというか。
年末年始の話じゃねぇのかよ、と突っ込みたいのをグッと堪えて彼女の話に耳を傾ける。