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「え、………あの、ひまり?」
「……ん?」
「ん?じゃ、ないだろ」
「どこ行くの?」
「どこって……」
彼女を俺のベッドに連れて行き、俺は踵を返して両親の部屋に行こうとしたら。
何故か、両手で俺の服を掴んでる。
これがどういうことを示してるのか、分かってるのだろうか?
1人じゃ寝れないから、寝るまで傍にいて欲しいとか?
いやいや、拷問すぎんだろ。
「寝るまで傍にいて欲しいの?」
「……ううん」
「じゃあ、何?」
エアコン付けてあるし加湿器も付けてある。
空気清浄機も稼働してる状態で、他に何があるのだろう?
寝慣れないベッドで寝付けないのかと思い、優しく髪を撫でると。
「残ってるお願いごと、今使ってもいい?」
「………え」
この状況下で、それを言うか?
いやいや、ひまりちゃん。
そういうことは今言ってはいけないと、空気を読んでくれ、頼むから。
薄暗い寝室に緊迫した空気が漂う。
掛け布団を口元まで覆い、恥ずかしそうにしてる素振りからして、何となく予想がつくから。
「一緒に寝よ?」
「っ……」
えっと、えっと……。
斜め上辺りの答えを期待してたんだけど?
こういう時に限って、何故どストレートで来るかな。
「無条件で聞いてくれるんでしょ?」
「………それはそうなんだけど、こういう使い方はどうかと思って」
「使い方のルールなんて聞いてないよ?」
「………」
普段のひまりからは想像も出来ないようなセリフ。
だからこそ、彼女が物凄く勇気を振り絞って言ったのが分かるから……。



