彼の素顔は甘くて危険すぎる


いや、内心はマジで嬉しいんだけど。
飛び上がるほど嬉しいし、どうにかなりそうなくらいめっちゃ嬉しいんだけど。

何だろう?
これって、夢??

「ぎゅーしていい?」
「……ん」
「え……?」
「ん?」

ひまりの様子がおかしい。
いつもなら、恥ずかしそうに視線を泳がせるとか、両手で顔を覆うとか……。
軽く拒否ることもしばしばなのに。

間があるにせよ、『ん』とすぐに返って来た。
どういうこと?

「ぎゅー、しないの?」
「え?」

俺から言い出したのにぎゅーしないから、不思議に思ったようだ。
ちょっと待て。
これもおかしい。
いつもなら、催促なんてしないだろ。

「ひまり、……だよな?」
「え?……どういうこと?」
「別人だとか、何かに憑りつかれてるとか?」
「まさか!」

いつものひまりらしくなくて、ついつい疑ってしまう。
両手であちこち触って確認するが、体はいつも通りの彼女だ。

「どこかで頭を打ったとか?」
「ううん、どこも打ってないよ?」

え?
じゃあ、何?
完全にパニクる俺は、彼女を隅々までチェックした、その時。

「あっ」
「気付いた?」
「ん、似合うな」
「フフッ。貰ったのはまだ着けれないけどね」
「ん、それはまだ少し先だな」

彼女の耳に、銀色のピアスが着いていた。
長い髪を下ろしていて、気付かなかった。

『開ける』とは聞いていたが、俺の知らない間に開けたらしい。
とはいえ、昨日合格発表だったから、昨夜?今日??

意外と行動派なんだなと、新たな一面を知った。