彼の素顔は甘くて危険すぎる


**

「えっ、開けて貰うって?」
「エヘヘッ」
「………受かったってこと?」
「うん」
「合格ってことだよな?」
「ん」
「んだよっ、じゃあ、メールでもいいから受かってたって連絡くらい寄こせよ」

空き教室でお昼ご飯を食べながら、彼女が嬉しそうに『ピアスの穴、開けて貰える♪』と言い出した。

いやいや、違うだろ。
その前に言うべきことがあるだろうに。

本当に彼女の考えてることはイマイチ分からない。
時々、斜め上辺りをサッと飛び越えることもしばしば。
まぁ、それも込みで彼女の魅力なんだろうけど。

「おめでとう」
「ありがとっ」
「で?」
「で?って??」
「お願いごと、すんじゃねぇの?」
「あ、それね~」
「ん」

1カ月ほど前に彼女からおねだりされた、『無条件でお願い事を聞く』というやつ。
さて、何だろうか?

「今は言えない」
「は?」
「だから、今じゃなくて、言いたくなったら言うから」
「………そっか」

なんかよく分からないが、いつ言われてもそんなに変わらないというか。

「じゃあ、お願いごとはひまりのおねだりということにして」
「ん?」
「俺から、何か欲しいものとかあればプレゼントしてやるぞ?」
「えっ?」
「欲しいものが出来た時で構わないから」
「それって、モノじゃないとダメなの?」
「ん?して欲しいことがあるのか?」
「今は無くても、出来た時にってのがいいかな」
「あぁ、なるほど。それでもいいぞ」
「やったぁ♪」

にっこり微笑む笑顔が眩しいほどに可愛くて。
ついつい触りたくなってしまう。
ここが、教室だということも忘れて。

「んッ?!」

卵焼きを頬張った口に軽くキスをした。