彼の素顔は甘くて危険すぎる


(不破視点)

ひまりの合格発表の日。
直接美大に発表を見に行くと言っていたのに、一向にメールが来ない。
もしかして、不合格だったのだろうか?

『どうだった?』と連絡したい思いをグッと堪えて、彼女からの連絡をひたすら待っている。

二限目が終わっても三限目が終わっても連絡がない。
既に四限目が始まり、これが終わればお昼休みになってしまう。

不合格なら、休むかもしれないな。
そんなことが脳裏の片隅を過った。

校舎が違うから、登校して来たのかすら確認する術がない。
昼休みになったら、彼女の教室にでも行ってみるか。

**

四限目の授業が終わり、昼食も摂らずに教室を飛び出た。
長い渡り廊下を進んで角を曲がった、次の瞬間。

「ッ?!っ……」
「ひまりっ」
「あ、不破くんっ」
「怪我しなかったか?」
「あ、……うん、平気」

出会い頭で彼女にぶつかってしまった。
彼女を抱き留める形で、お互いに静止していると、周りの視線に気づき、ハッと体を離す。

「ちょっと来い」

購買に昼ご飯を買いに行く生徒も多いこともあり、廊下を行き交う生徒の視線が突き刺さる。
俺は彼女の手を掴み、教室の脇にある階段を上へと上った。

普段は使わない特別教室がある4階。
以前、彼女と成瀬が密会していた場所だ。
その教室の隣の空き教室に彼女を連れて入る。

「連絡ないから、心配した」
「……ごめんね」
「事故にでも遭ったかと思うだろ」
「……この通り、何ともない」

俯き加減の様子を窺うと、不合格だったようだ。

「無事ならそれでいい。ここでお昼一緒に食べるか?」
「え?」
「嫌なら別にいいけど」
「食べる!!今すぐ取って来るね?」

彼女は合否について何一つ語ろうとせず、教室へとお弁当を取りに向かった。