彼の素顔は甘くて危険すぎる


11月第2水曜日、午前10時。

今日は美大の合格発表の日。
ネットで合格発表の一斉通知がされるのは午後2時。
郵送で自宅に届くのは恐らく夕方。
一番早くに合否を知ることが出来るのは、直接自分の眼で掲示板を確認するのが一番。
高校は遅刻扱いにして貰い、美大のホールに掲示される合格発表者を自身の眼で確認するため、美大を訪れている。

両親は平日ということもあり、仕事中。
不破くんはもちろん、授業中で。
誰も付き添いがいないけど、それが返って有難い。

だって、万が一不合格だったら、どんな顔していいのか分らないもの。

大学の正門をくぐり、同じように高校の制服を着た子が正面玄関へと歩いて行く。
同じことを考えてるらしい。

推薦枠だから、それほど人数はいないだろうけど。
見たところ、5~6人ほどいる。
同じ場所を目指して歩いていることもあり、自然を視線が交わった。

もしかしたら、同級生になるかもしれないその子らに軽く会釈して、ホールへと歩み進める。

10時30分に発表とあったから、まだ時間は少しある。
私はホールに飾られている絵画をじっくりと眺め始めると、麻友ちゃんがやって来た。
同じ美大を推薦枠で受験したから、受かれば同級生。

「おはよ」
「ひまちゃん、おはよ~」

**

来た道を戻り、学校へと向かう。
両親には既にメールで知らせてあるが、不破くんには何て伝えよう。

いつもとは違う電車内。
通勤通学のラッシュ時間ではないお陰で、好きな場所に座れる優越感。
私は日当たりのよい左側のシートに座り、スマホを立ち上げた。

けれど、何て打っていいのか分からない。
簡素に打てばいいのだろうけど。
それをする重みを感じて、中々打てずにいた。