試験当日の朝。
少し早めに自宅を出ると、家の門塀の前に彼が立っていた。
「おはよ」
「おはよう。どうしたの?こんな朝早くに」
「緊張してるだろうなと思って」
「……さすがにね」
「スマホ貸して?」
「スマホ?」
彼が手を差し出して来たから、その手に自身のスマホを乗せる。
すると、彼はそれと自身のスマホを何やら操作し始めて。
「ん」
「何したの?」
「リラックスする曲を入れといたから」
「えっ、……ありがとっ」
「これくらいしか、してやれないけどな」
「助かるよっ」
「ん」
「ん?」
「充電させてやる」
「っ……」
彼は両手を広げた。
そこに私が飛び込めばいいらしい。
朝から彼に抱き締められるだなんて、幸せすぎる。
しかも、オリジナルで曲まで用意してくれて。
新曲の制作で忙しいと言ってたのに。
「出し切って来い」
「うん!!」
『頑張れ』とは言わない彼。
彼はいつも私に『頑張りすぎる』というのが口癖。
だからかな、今日も『頑張って来い』とは言わない。
だけど、それがあまりにも心地よくて。
「ありがとっ」
「終わったら連絡して?」
「ん」
彼は触れるだけのキスをおでこにした。
**
電車に揺られ、いつもとは違う路線に乗っている。
緊張を解すため、イヤホンで彼の入れてくれた曲を聴く。
明るめの流れるような爽やかな曲だ。
春をイメージしているのか、少し心が躍る感じもする。
合格したら……。



