「不破くんは?どうするの?」
「……大学には行こうと思ってる」
「頭いいから、どこにでも行けるもんね」
「そういう問題じゃない」
「え?」
ぷくっとふくれた彼。
何に怒ってるんだろう?
行きたくないけど、両親に説得でもされたのかな?
「どこの大学に?」
「まだ決めてない」
「え?もう10月になるよ?」
高校3年の10月。
進学するなら、とうに志望校は決まっていて当然なのに。
幾つか候補があって、迷ってるってこと?
「何を専攻するの?前に聞いた時は音大には行かないって言ってたけど」
「……ん」
本棚の一角に飾ってあるデッサン画を手に取り、彼はじっと見つめていた。
「やりたい事とすべき事が違うのは、究極の選択だよな」
「え?」
「これ、俺でしょ?」
「………うん」
「なんかエロいな」
「っ……そう?」
彼の視線に先にあるのは、シャワーを浴びる彼を横から見たのを描いたもの。
髪が濡れて顔は隠れているけれど、彼が言うように少し艶めかしい感じに描きあがってる。
それは、彼がそんな風になった瞬間を切り取ったもので。
私がデフォルメしたわけではない。
私がそれを求めて描いたというより、彼本来持っている色気が出た瞬間を描いたものだから。
話が逸れてしまった。
というよりも、彼がわざと逸らしたのかもしれない。
きっと、突っ込んで聞かれたくない、そう思えた。
「この関係」
「ん?」
「今の、この関係」
「……ん」
「卒業と同時に解消するつもりじゃ、……ないよね?」
彼が進路のことを渋る理由の一つは、アメリカに帰るという選択肢があるからだ。



